For No One

No sign of love behind her tears Cried for no one

新型コロナ騒動で暴かれたパチンコ業界の本質と将来性

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 2020年4月、新型コロナ感染症の拡大予防のため、政府が緊急事態宣言を発令し(当初7都府県から全国へ拡大)人が密集しやすい商業施設には自粛が要請された。

 この騒乱の中で注目を集めたのがパチンコ店である。肩を寄せ合い遊技し、喫煙者も多く(喫煙中はマスクはできない)、パチンコもスロットも素手で触り、顧客は台を自由に移り変わりながら遊技する。常識的に考えて感染リスクが高く、(重症化しやすい)高齢者が顧客に多いこともあって各自治体で休業要請が相次いだ。

  社会的責任の観点から早々に自粛を決めた企業も多く実質9割以上の店舗は休業した。しかし要請を無視して営業を強行した一部の店舗に顧客が集中したことが、コロナ禍で不安と鬱憤の溜まった人々の目にとまった。朝から顧客が並ぶ光景が連日テレビで繰り返し報道され、遂には大阪の吉村府知事が休業要請を受け入れない店名の公表に踏み切るほどであった。

ここで批判されたのは
①社会的責任を果たさず利己に走ったパチンコ店
②外出自粛要請を無視する顧客の身勝手さ

両方であり、パチンコ店、およびその顧客は社会の害悪であるという論調が強まり、ついにはパチンコ不要論も噴出した。これを受けてパチンコ業界の将来について考察していきたい。

 

業界の現状(すでに斜陽化が進んでいる)

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http://pachinko-shiryoshitsu.jp/structure-industry/scale/

 

パチンコ業界の市場規模は2009年頃をピークに右肩下がりとなっている。同時にユーザーも減少の一途を辿っており、特に若年層の参加率は壊滅的である。

 

原因① スマートフォン登場による余暇減少

 市場縮小の主な要因はレジャーの多様化とスマートフォンの登場だ。パチンコは産業区分では「レジャー産業(余暇産業)」とされており、読んで字の如く「余った暇」を埋めるビジネスである。スマートフォン登場以前は世の中は「暇」が溢れていた。電車に乗っている間や待ち合わせで相手が来るまでの間など、日常の隙間に存在する「暇」を埋めるものは、CD(カセット)ウォークマンや文庫本くらしかなかったのではないか。もっと言えば、休日に朝起きて「何も予定がない」という日を埋める選択肢は、テレビや家庭用据置ゲーム機くらいで、人は隙を埋めるために出かけ、時間を潰す選択肢として街のそこかしこに存在するパチンコ店は便利な存在だった。しかしスマートフォンの登場により人々はどこにいてもSNSで誰かと常につながり、またいつでもどこでも高品質なゲームで遊ぶことができるようになった。「暇」の多くは消えてしまったのだ。

原因② メディア露出の減少

1990年代まではバラエティ番組でパチンコ企画もあり、2008年頃まではパチンコ機種のTVCMが多く流れるなど、テレビというメインメディアにおいてパチンコは少なからず存在感があった。しかし広告規則などによりパチンコ機種のCMは姿を消し、パチンコ店のCMもイメージ広告に限られ、TV番組では深夜帯に専門番組がある程度となり、いわゆるオワコン扱いに成り下がってしまった。

原因③「カッコいい」価値観の変化

90年代後半〜2000年代にはスロット機が隆盛を極めた。ハンドルを回して運に任せるパチンコよりも、目押し(リールを任意の位置で停止させる)による獲得枚数増加が可能であったり、ゲーム内容が複雑になったことで設定の推測や当たりやすいポイントを見極めたりと、技術と知識介入要素が高まったことで若者の参加率が激増した。この時期、いわゆる「ちょいワル」なカッコよさの要素の中でにスロットは存在し得たのだ。しかし2000年代後半からグローバル化が進み、「カッコいい」価値観は変化していった。タバコ、麻雀、競馬、などとあわせて、もれなくスロットもモテる要素からは離れていった。パチンコにいたっては尚更である。

パチンコ業界2020年の逆風

 実は、新型コロナ感染拡大による騒動以前に、パチンコ業界では既に2020年問題と言われる激震が走っており、年内中に多くの廃業が予測されていた。

 理由の一つ目は「禁煙化」である。改正健康増進法により、2020年4月からパチンコ店も禁煙(受動喫煙防止)が義務付けられた。店舗では喫煙ブースを設置するなどの対応が図られたが、そもそもパチンコと喫煙は親和性が高い。当たらずイライラする時に吸い、当たった達成感で吸う。事実、とある調査結果ではパチンコ店内での喫煙率は60%を超えている。また、昨今では喫煙できる場所が減っているため、清々とタバコを吸える場所を求めてパチンコ店に足を運ぶ客も多いという。つまり禁煙化によるダメージは間違いなく甚大なのだ。

 業界側は「受動喫煙が嫌で敬遠していた顧客が戻ってきたり、新規参入が増えれば・・・」と淡い期待もあるようだが、相対的にはユーザーおよび遊技頻度は間違いなく減少するだろう。

 もう一つの理由は「遊技機の仕様(大当たり確率や1回の大当たりでの獲得玉数)変更」だ。パチンコ、スロットは警察庁が管轄しており、ギャンブル性が高くなり過ぎないように遊技台を作るにあたり細かな規則がある。この規則の大幅な改定が数年前から進められており、古い基準で作られた遊技機は時限的に撤去が進められることになっている。その最終段階が2021年1月であり、パチンコ店は期限までに店内の多くの遊技台を入れ替えなくてはいけないが遊技台は40万円前後であるため莫大な費用がかかる。また、新基準の機械は旧基準に比較してギャンブル性が低く、売上増は見込めない(歴史的にギャンブルはハイリスクハイリターンが好まれるのだ)。現在、パチンコ店は全国で10,000店ほどあるが、このうち2〜3,000店舗はこれを潮時として廃業するのではと言われている。

暴かれたパチンコの本質

 パチンコについては「賭博ではないのか」という議論は尽きない。国会でも度々持ち上げられ、結果「遊技であり刑法違反ではない」と結論づけられているようであるが、いかなる理屈と建前があろうとも、本質は「ギャンブル」である。景品交換(=換金)が出来なければ、顧客のほとんどは消えるだろう。

 その本音と建前は、実は多くの人が薄々わかっていながら一つの文化として看過してきた。しかし今回のコロナ騒動で、一部の店舗が利己に走り営業を強行し、一部のユーザーが社会的な空気を読めずに押し寄せた光景を見て、人々の感情が爆発したのだ。「やはりパチンコはギャンブル。違法な商売。そこで遊ぶ人間も悪であり社会不適合」「真面目な人々の努力を無にする反逆集団」といった声をメディアも煽った。
 正直、自粛要請の意図を汲まずに自分勝手な行動を取る人は、パチンコユーザーに限ったことではなく(ゴルフ練習場、夜の街、旅行など)、多くのパチンコ店、およびユーザーは真摯な対応をとって感染拡大予防に努めていた。しかし今回パチンコが槍玉に上がり擁護がなかったのは、人々の深層心理にパチンコへの不快感があったことに加え、業界の政治やメディアへの影響力が低下しているためであろう。ひと昔前であればメディアもここまで煽らず、政治サイドも店名公表までは踏み切らなかったはずだ。

 今回の騒動で「パチンコは営業する側も遊ぶ側も社会性が底辺」という印象がついてしまった。地域コミュニティとしての社会的存在意義を感じて真面目に営業し、業界のイメージ変革を願ってきた企業は地団駄を踏んでいるだろうが、残念ながら今回で植え付けられたイメージにより新規ユーザーは増えず、既存ユーザーも参加しづらい状況は続き、元の参加人口には戻ることはないだろう。

アフターコロナのパチンコ業界(多重苦を乗り切れるのか)

つまりパチンコ店は
 ・禁煙化による売上減少
 ・規則改正対応によるコスト増加
 ・世間的イメージの失墜
 ・社会的影響力の低下
 ・感染リスクのある危険地帯としての敬遠
 ・少子化により新規顧客の減少
 ・余暇の減少
 ・顧客高齢化によるユーザー数の先細り

と、とてつもない多重苦が待ち受けている。

ここから10年は倒産・廃業ラッシュが予想される。潰れた店舗から放り出された客の受け皿として上位チェーン企業は持ちこたえるだろうが、その先は緩やかに衰退していくだろう。かつて国民的娯楽と言われたパチンコの未来に光は見えない。